先日、Twitterでこんなアンケートをやってみました。
あなたにとって、”コンディショニング”の定義とはなんですか?
一番近いものをお選びください
- 筋力以外のトレーニング
- 機能低下部位の機能回復
- 患部の治療・ケア
- 低強度少量の練習
これを、
- ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ
- アスレティックトレーナー(AT)
- 理学療法士(PT)
- 治療家(鍼・灸師、あんまマッサージ指圧師など)
- 競技コーチ
の5つの職種ごとに実施しました。
なぜこのようなアンケートをやってみようと思ったかと言いますと、競技スポーツの現場でよく使われる“コンディショニング”という用語に対する認識やその使い方が上記の職種ごとに若干の違いがあるな〜と感じていたので、実際のところどうなんだろう?と聞いてみたくなったからです。
全体でのべ275件のご回答をいただき、なかなか興味深い結果が出ましたのでご紹介します。あくまでTwitterのアンケート機能の回答に基づく見解ですのでツッコミどころもありますが良かったら最後まで読んでみてください。
目次
競技スポーツにおける”コンディショニング”とは?
まずは競技スポーツにおいて”コンディショニング”という用語はどんな意味合いがあるのか?という点について押さえておきましょう。
以前のブログ記事でもご紹介したことがありますが、競技スポーツ選手へのS&C指導に関する最も代表的な資格【CSCS】を発行している全米S&C協会(NSCA)は”コンディショニング”を以下のように定義しています。
コンディショニング(Conditioning)とは、スポーツパフォーマンスを最大限に高めるために、筋力やパワーを向上させつつ、柔軟性、全身持久力など競技パフォーマンスに関連するすべての要素をトレーニングし、身体的な準備を整えることです。また、一般の人々にとっては、快適な日常生活を送るために、筋力や柔軟性、全身持久力をはじめとする種々の体力要素を総合的に調整することです
NSCAジャパンHPより
つまり、競技パフォーマンスを高めるために必要な体力要素を整える過程すべてがコンディショニング、ということになります。ただこれはあくまでトレーニング指導に特化したS&C専門職にとっての狭義でのコンディショニングという側面があり、怪我をしている患部の治療や、怪我や不良姿勢など何らかの原因によって機能低下を起こしている部位の機能回復、といったメディカル的な介入、さらには食事や睡眠といったリカバリー(疲労回復)戦略、不安やストレスなどメンタル面のマネジメントなども広義のコンディショニングには含まれていることも押さえておきたいところです。
では、いよいよアンケート結果を見ていきます。
アンケート結果:S&Cコーチ編
S&Cコーチからの回答数は80件でした。
筋力以外のトレーニングが40%に留まった一方で機能回復がそれ以上あったのは正直以外でした。というより何でそっちやねん、、と少し残念に思いました(笑)CSCSやJATI-ATIといったトレーニング指導関連の有資格者ならトレーニング一択やろ、、と。
もしかしたらS&Cコーチとして活動しているけれどCSCSもJATI-ATIも持っていない、という人からの回答も含まれていたのかも知れませんね。
それはそれでどうなん?て思いますけど。
アンケート結果:アスレティックトレーナー編
アスレティックトレーナーからの回答数は47件でした。
55.5%と半数以上が機能回復と答えていたのは納得でしたが、それに次いで多かったのが筋力以外のトレーニング(23.4%)で治療・ケアを上回っていたのがとても良い傾向だと感じました。もちろん怪我をしているのであれば患部の治療やケアは不可欠なのですが、トレーニングをすることで怪我の発生を減らして欲しいという想いが表れているのかなと思います(違ったらすみません)。
アンケート結果:理学療法士編
理学療法士からの回答数が99件と最多でした。
機能回復が45.5%と半数近くを占めていたものの、残りはトレーニング、練習、治療・ケアに回答が分散していました。これは他の職種にはなかった傾向で、理学療法士は他職種に比べて”コンディショニング”に対する認識とその使い方における個人差が大きいのかも知れません。
アンケート結果:治療家編
治療家からの回答は17件と最少でした。
一番多くなると予想した治療・ケアが23.5%と全体の1/4ほどで、最も多かったのが機能回復(47.1%)だったのは意外でした。これは治療・ケアも機能回復のうちに含まれるという認識なのかも知れません。 トレーニングも17.6%あり、コンディショニングの一環としてある程度は認識されていそうです。
アンケート結果:競技コーチ編
競技コーチからの回答数は32件でした。
機能回復が53.1%、トレーニングが37.5%と実に全体の9割の人がそれらをコンディショニングと認識されているのはとてもいい傾向だと思いました。ただその反面、低強度・少量の練習への回答はわずか6.3%しかなく、練習の強度や量を調節することがコンディショニングの一環としてはさほど意識されていない可能性が示唆されたとも言えそうです。。
練習はキツければ良い、やればやるだけ良い、という認識があるのだとすればそこは見直してみると良いのではないでしょうか。時には練習の強度を落としたり練習量を減らしたりすることによって過度な疲労の蓄積や怪我の発生を軽減させることができ、結果として練習の質と競技力の向上につながるはずです。
まとめ
今回アンケートを実施してみて、“コンディショニング”をいう用語の定義がかなり広範囲であるが故に、職種によってその認識や使い方はマチマチなんだなぁと再認識することができました。
今回いただいたのべ275件の回答の約半数が”機能低下した部位の機能回復”でした。これは本来あるべき機能を獲得することが競技パフォーマンスを高めるためには重要だ、という共通認識の表れかと思います。
ただ個人的にはS&Cコーチはそっちじゃなく”筋力以外のトレーニング”が圧倒的多数であって欲しかったですね。このところのS&C業界は機能的あるいは構造的エクササイズを用いたいわゆる”動き”のトレーニングを強調する指導が少なくないと感じますが、伝統的なウェイトトレーニングがそのベースになっているのは間違いないと思います。S&Cコーチとしてトレーニング指導に従事する人たちにはいま一度基本的なウェイトトレーニングを見直してもらいたいところです。
競技スポーツの現場に携わる専門職同士であっても、それぞれが日常的に使っている”コンディショニング”という用語の意味合いには微妙なニュアンスの違いがあることにお互い注意しつつ、そこら辺をうまく擦り合わせながら日々の選手指導が円滑に進むよう努めていきたいですね。