オープンゼミ「S&Cのすすめ」:次回は6/23(木)22:00開講!

【論文紹介】筋力および筋肥大のためのトレーニング:科学的根拠に基づいたアプローチ

ストレングス&コンディショニング(S&C)においてその中心となるのが筋力トレーニングです。筋力トレーニングの主な目的は、筋肉量を増やすこと(筋肥大)と筋力強化です。

筋肥大や筋力強化に影響をおよぼす要因と、それぞれの目的に適したトレーニング方法などについてまとめられた新しいレビュー論文をご紹介します。

Training for Strength and Hypertrophy: An Evidence-based Approach.

Morton, Robert W., Lauren Colenso-Semple, and Stuart M. Phillips.
Current Opinion in Physiology 2019, 10:90–95

背景

骨格筋力はヒトの健康にとって重要であり、筋力と筋サイズは運動能力の主要な要素である。

目的

筋力と筋サイズ(肥大)に影響を及ぼすレジスタンスエクササイズトレーニング(RET)変数について、根拠に基づいた推奨事項を提供する。

筋力強化トレーニングの科学的根拠

負荷

1RM(最大挙上重量)は、>85%1RM(高負荷)でのRETによって向上する。
ただし、普段のRETとは異なるプロトコルでのテスト(等尺性)の場合は、必ずしも高負荷でなくとも向上する場合がある。
RETによる筋力の向上は、主に高負荷(高重量)と特異性(テストに近い形式でのRETプロトコル)によって決まる。

週間トレーニング量(回数 × セット数)は、セッションごとのセット数、セットごとの反復回数、週あたりのセッション数、によって直接的に変更でき、負荷や筋緊張時間(Time under tension)によって間接的に変更できる。
同一筋群を週に15セット以上トレーニングすると、回復が不十分となり筋力のプラトー(横ばい)や低下が見られる場合もある。

セッションごとに5回の1RMテストを行うグループと従来のRET(4セット8~12RM)を行うグループでは、どちらも8週後の1RMテストが同様に向上した。
すなわち、RETによる筋力向上は量よりも特異性(強度)が優先される。

トレーニング頻度

週あたりのトレーニング量が一致する/しないに関わらず、トレーニング頻度は筋力の向上には影響しない。

休息時間

トレーニングを積んでいる人にとっては2~5分の休息時間が筋力向上に有効。
ただし、トレーニング経験やトレーニング内容によっては長い休息時間は効果的ではない。

その他の変数

トレーニング時刻、筋緊張時間の長さ、スケジュールに対する自主性の有無、血流制限の有無、連続実施日の有無、などは筋力の向上に影響しない。

多関節種目は単関節種目よりも効果的であると考えられる。
計画(ピリオダイズ)されたプログラムはそうでないプログラムよりも効果的。

筋肥大トレーニングの科学的根拠

負荷

筋肥大のためのRETでは高負荷は必要ではない。
30~50%1RM(低負荷)と>70%1RM(高負荷)をそれぞれ疲労困憊まで反復した場合、どちらも同様に筋肥大する。

トレーニング量の増加は、トレーニング経験のない人よりもトレーニング経験のある人の方が筋肥大に大きく影響する。ただし、同一筋群あたり最大で週15セット以下が望ましい。トレーニング経験のない人は同一筋群あたり週に10回以上の反復が必要である。

トレーニング頻度

トレーニング頻度を増やしてもトレーニング量が等しければ筋肥大には影響しないが、トレーニング量を増大させるためにトレーニング頻度を増やすこと(例えば週1回を週3回に)は、筋を肥大させる可能性がある。

休息時間

セット間の休息時間を60秒以上に増加させることが筋肥大に貢献する可能性がある。ただし筋力トレーニングを同様に、休息時間の影響は実施するトレーニングの内容によって異なるを考えられる。

その他の変数

トレーニング時刻、収縮速度、多関節vs単関節、セッション間の日数、血流制限、RET変数に対する自主性の有無、などは、筋肥大にまったくorほとんど利益がないと考えられる。

伸張性(エキセントリック)筋活動のみのRETは、短縮性(コンセントリック)収縮のみのRETよりも筋肥大に効果がある。

努力の度合い

同じ強度、量、反復回数で疲労困憊までトレーニングするのであれば、単純に関節を動かすよりも全力で筋収縮させるよう意識(内部焦点)した方が筋肥大しやすい。

筋力強化および筋肥大トレーニングにおける根拠に基づいた推奨事項

筋力強化トレーニングの推奨事項
  • テストに類似したトレーニング
  • 85%1RM以上の高負荷
  • 同一筋群あたり週に15セット以下
  • 2分以上の休息時間
  • 体重1kgあたり1.6g/日のタンパク質の摂取も有効
筋肥大トレーニングの推奨事項
  • 全力で挙上する意識
  • 同一筋群あたり週に10回以上の反復、15セット以下
  • 週3回セッション以上
  • 60秒以上の休息時間
  • 体重1kgあたり1.6g/日以上のタンパク質の摂取

と、まとめてみましたが、

筋力を強化するには高重量を挙げた方が良くて、筋肥大するには疲労困憊まで追い込んだ方がいい、という目新しくも何ともない情報になってしまいました。

新しい論文が新しい情報、という訳ではありませんね。
復習する際の参考にしていただければ幸いです。