皆さんこんにちは。
池田です。
先日、Xにこのようなポストをしました。
この図解だけだとわからないづらいと思ったので、もう少し詳しく書いてみます。
なるべくわかりやすくお伝えするために厳密な力学の定義とは異なる表現も含みますのがご容赦ください。
目次
測定機器を使った代表的なジャンプ高の算出手法
近年、加速度センサー型のVBT(Velocity Based Training)デバイスやポータブルフォースプレートを使って、現場でジャンプ高を測定するトレーニング指導者が増えています。
とても手軽にジャンプ高を測れるので便利なのですが、正しくない測り方をしているケースも増えているようです。
加速度センサー型のVBTデバイスとフォースプレートは、いずれもジャンプの離地時(地面を踏み切って足が地面から離れる瞬間)の上昇速度をもとにジャンプ高を計算しています。
前述の図を使って解説しますと、
跳躍高(h) = 上昇速度(v/2) × 上昇した時間(v/g)
となります。
(v/2 は離地から最高到達点までの平均速度、v/gは離地から最高到達点までの時間)
gは重力加速度(9.81m/s/s)のことですので、g = 9.81となります。
ですので、離地速度(v)がわかればジャンプ高がわかる、ということになります。
そして加速度センサーとフォースプレートでは、この離地速度を算出する方法がそれぞれ異なります。
力積法(フォースプレート)
ジャンプ高測定で最も信頼性が高く、ゴールドスタンダードとなっているのがこの力積法です。
力積は、発揮した力の大きさとその力を発揮した時間の長さで計算します。
力積 = 力 × 時間
正確には力の時間積分ですが、ここではわかりやすく表現しています
力は、質量 × 加速度
です。
これは、力とは物体を加速したり減速したりする時に必要なもの、ということを表しています。
ですので、
力積 = 質量 × 加速度 × 時間
と言い換えることができます。
ここに加速度 × 時間 が含まれていますが、これはすなわち速度、となります。
ということは、
力積 = 質量 × 速度
と見ることもできる、と言えます。
(実際には、この質量 × 速度は、運動量(momentum)という物理量として表されます)
ということは、
離地速度(v) = 力積 / 質量
力積を質量で割り算すれば離地速度がわかる、ということになります。
こうして算出した初速度を、前述の計算式に代入すればジャンプ高が算出できる、という訳です。
滞空時間法(加速度センサー型VBTデバイス/マットスイッチ)
加速度センサー型のデバイスやマットスイッチでは、滞空時間法を使って離地速度を計算しています。
滞空時間は離地してから着地までの時間ですが、上昇時間はちょうどその半分(t/2)となります。
離地してから滞空時間のちょうど1/2の時点で最高到達点に達し、そのあと同じ時間をかけて落下していきます。
上昇速度は、離地の瞬間が最も速く(離地速度v)、離地後は重力(g)の影響で最高到達点に向かうにつれ遅くなっていき、最高到達点でゼロになります。
ということは、
離地速度(v) = 重力加速度(g) × 上昇時間(t/2)
重力加速度に上昇時間をかければ離地速度がわかる、ということになります。
こちらも前述の計算式に代入すればジャンプ高が算出できる、という訳です。
加速度センサーやマットスイッチでジャンプ高を測定する時の注意点
滞空時間法を使ってジャンプ高を計算する、ということは、滞空時間が長くできれば算出されるジャンプ高は高くなる、ということになります。
つまりこれは、何かしらのチートを使って滞空時間を長くできれば、実際よりも高くジャンプしたように見せかけることができる、ということでもあります。
その最も簡単なチートが、膝を曲げた姿勢で着地する、というものです。
膝を曲げたまま着地をすると地面に足が着くタイミングを少し遅くできるので、その分滞空時間が長くなり、結果としてジャンプ高が高く算出されます(フォースプレートを使う場合は力積法でのジャンプ高算出ですので、空中姿勢や着地姿勢はジャンプ高の算出には全く関係ありません)。
ですので、加速度センサー型のVBTデバイスやマットスイッチを使ってジャンプ高を測定する際には、以下のルールを守る必要があります。
- 膝を曲げたまま着地をしない
- できるだけ離地時と同じ姿勢で着地する
とはいえ、着地時には必ず衝撃を吸収しようとして膝は曲がってしまうものなので、膝を伸ばしてつま先立ちのまま着地させるのはかえって危険です。
実際のところは選手の離地時の姿勢と着地動作を目視で確認して、明らかにチートしている場合には正しい動作を説明して測定をやり直す、という対応が一番スマートです。
VBTデバイスやフォースプレートはとても便利ですが、適切に使いこなすにはこうした力学に関する基礎的な知識を身についておく必要があります。
知識が不足したままこれらの機器を使っても正しい選手評価やトレーニング処方に繋がりません。
このブログをきっかけに学びを深めていただければ幸いです。
このジャンプ高の算出法やフォースプレートで計測できるカウンタームーブメントジャンプの地面反力の見方について詳しく解説したこちらの動画コンテンツもぜひ参考にしてみてください👇
