フリーランスのS&Cコーチがどのようにしてチームとの契約を得ているか

最近のブログ記事では、チーム指導を行っているS&Cコーチの契約形態チーム専属のフルタイムS&Cコーチが毎日どんな仕事をしているかについて書きました。
今回はその続きになります。

S&Cコーチを目指している方や実際にフリーランスS&Cコーチとして複数のチームとパートタイム契約をされている方から、

どうすればチームとの専属契約ができるようになりますか?

という質問を度々いただきます。

というのも、S&Cコーチの採用情報は多くの場合が公に出てくることがないからです。私も20年ほど前にそうだったように、チームとの専属契約はS&Cコーチを目指す人やS&Cコーチとして活動を始めた人にとっての目標やステータスになっているかと思います。でも実際のところ一体どうやってそのポジションにたどり着くことができるのか?がわからないので、目指したくてもどう目指せばいいかわからない、という状態なのではないでしょうか。

そこで今回は、フリーランスのS&Cコーチがチームとの専属契約に至るいくつかの経路について解説していきます。

S&Cコーチがチームとの契約にいたる経路

現役S&Cコーチ同士の情報交換(口コミ)

おそらく現状ではこれが一番標準的な経路かと思います。私もこれまでに交わした契約のほとんどがこの形でした。

既にチーム専属あるいは経験年数の多いS&Cコーチの元に「◯◯というチームがS&Cコーチを探しているんだけど誰が適任者はいませんか?」という連絡が、同業のS&Cコーチや関係者から回ってきます。

そこで連絡を受けた側のS&Cコーチが自身の人脈を通じて、①採用の時期に現所属との契約が満了する、②複数のパートタイム契約をしているが専属契約を探している、③熱意や能力はあるものの残念ながら今のところ所属先がない、といった人材に採用情報を伝えてチームの採用担当者と繋げる、という流れです。

年度末や各スポーツのシーズン終了の数ヶ月〜終週間前には、毎年複数のチームからの情報が口コミで広がります。上記の①や②に当たる人はこの状況を知っているので、事前に知り合いのS&Cコーチ達に連絡をして情報収集をしたりもしています。

残念ながら③に該当するキャリアや人脈のない若手には採用情報が届きにくく、非常に職を得づらい状況であるのは事実です。ただ、候補者を探す側のS&Cコーチが、紹介できそうな人材が見当たらなくて「探したんですが適任者が見当たりませんでした。」と返答するケースも少なくありません。ですので、若手の皆さんにはセミナーや勉強会に出向く、直接問い合わせて現場見学を申し込むなど、是非とも自身の存在をアピールしていただければと思います。

公募ではなく紹介によって採用する人材を探す形式が主流となっているのは、チーム関係者の中にS&Cコーチの能力を採用前に評価することができる人がいないことが理由のひとつになっているのではないかと思われます。
CSCSやJATI-ATIの資格を持っていても選手にトレーニング指導する能力が高くない人もいますし、それらの資格を持たずに持論を頼りに適切ではないトレーニング指導している人もいたりしますので、公募してチームにフィットしない人を採用してしまうよりはあらかじめある程度の能力や経歴、人間性がわかっている人の方が安心できる、というチーム側の考えが反映されているのだろうと思います。(ただ、実際には指導能力が高くなかったり、持論だけで指導している人がチーム専属契約を更新し続けているケースもあります。。)

チームからの公募

S&Cコーチの採用情報を公開しているチームもあります。
チームのホームページやSNSで密かに募集しているのをたまに見かけるので、気になる競技やチームがある人は定期的にそれらをチェックすると良いでしょう。

ただ、公開されている採用情報の中には、その仕事内容や採用条件が少しおかしいものも含まれていたりします。例えば仕事内容に「テーピング」や「ケア」「リハビリ」が入っていたり、採用条件にCSCSやJATI-ATIなどのトレーニング指導資格が必須でなかったりするものもたまに見かけます。
予算が限られているのでS&Cコーチ以外の仕事も掛け持ちしてもらいたい、あるいは、そもそも採用担当者がS&Cコーチの専門性をあまりご存知ない、といった背景がそのような公募内容になっている理由なのかも知れません。

ですので、もし採用情報を見つけた場合は、その仕事内容や採用条件をしっかり確認した上で応募するかどうかを判断した方が良いと思います。

チーム専属契約の情報は少ないですが、トレーニング指導の求人情報を掲載してくれているサイトもありますのでご参考まで。
ATACK NET

自分からの売り込み

公募が出ていなかったとしても、チームにS&Cコーチの採用がないか問い合わせたり履歴書を送ったりする事で契約につながるケースもあります。
実際に、地元にある自身の出身競技のプロスポーツチームに「働かせてほしい」と電話をかけたことがきっかけでフルタイム契約に繋がった、という人もいます。

ただしこの経路から契約に至る確率はかなり低いと思われます。ほぼ運かと。
ですが、本気でチームで働きたいと思うのであればその熱意を伝え続けるのもひとつの方法だと思います。チームが採用を検討するにしてもタイミングがありますので、コンタクトした時に採用が検討されていなかったとしても、その後に採用を検討するタイミングがあれば「そういえば以前◯◯さんから履歴書をもらってたな、一度連絡してみようか」と候補者として思い出してくれるかも知れません。全く思い出してもらえないかも知れません。。

インターンからの昇格

まずはアシスタントやインターンとして働かせてもらい、その後にパートタイムやフルタイム契約に至るケースです。

既に専属S&Cコーチがいるチームの中には、アシスタントやインターンを随時募集しているところもあったりします。アシスタントであれば時給や交通費が支払われる場合もあります。インターンは無給である事がほとんどです。
当然それだけは生活していけないので他にも仕事をしなければなりませんが、アシスタントやインターンとしての働きを認めてもらえると何かしらのチャンスが巡ってくる可能性が高くなります。
例えば、チームのヘッドS&Cコーチが退職 or 移籍することになった場合はアシスタントからヘッドに、あるいはインターンからアシスタントに昇格する事もあるでしょうし、ヘッドS&Cコーチの元に入ってきた他チームでの求人に推薦してもらえるかも知れません。

まとめ

以上のように、今のところほとんどのS&Cコーチの採用は口コミと紹介によって決まっていますので、情報元になるような中堅〜ベテランS&Cコーチとの繋がりのない若手の皆さんが採用情報に対して「待ち」の姿勢でいる限り、フルタイム契約を勝ち取るのは容易ではありません。ですので、チームの専属S&Cコーチとして働きたい方は自分から積極的に動いて中堅〜ベテランS&Cコーチとの人脈をつくっていくことが非常に重要です。