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専属契約のS&Cコーチとして働くメリットとデメリット

みなさんこんにちは。
ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチの池田です。

ここのところ何回か、S&Cコーチとしての働き方について書いてきました。
チーム指導を行うS&Cコーチの契約形態について
チーム専属のフルタイムS&Cコーチが毎日どんな仕事をしているか
フリーランスのS&Cコーチがどのようにしてチームとの契約を得ているか

これらのブログ記事の中で「チームとの専属契約を交わしフルタイムS&Cコーチとして働くことは多くの若手S&CコーチやS&Cコーチを目指しておられるみなさんにとっての憧れでありひとつのステータスである」と書きました。

私もS&Cコーチを目指すひとりの若手だった20年前にそう思っていましたし、その考えは今も変わっていません。私はこれまでの15年間でいくつかのチームや機関と専属契約を交わしフルタイムS&Cコーチとして働いてきて、チームと苦楽を共に過ごしチームや選手個々の成長と成功をサポートするという専属S&Cコーチの仕事は、やっぱりエキサイティングでやり甲斐のあるものだ!と感じています。

しかし、そんな専属契約にも専属契約ならではの困った事情があったりします。若手の皆さんには、20年前の私のように専属契約を目指して頑張って欲しいですが、専属契約を勝ち取った先に待っている実情も知っていただいてもいいかなと思いました。
そこで今回は、専属契約のS&Cコーチとして働く上でのメリットとデメリットに関する私の考えを書いてみることにします。

専属契約で働くメリット

他に仕事を掛け待たなくても生活できるだけの収入が得られる

これが専属契約の最大のメリットではないかと思います。
多くのフリーランスS&Cコーチの皆さんは生活をしていくために必要な収入を得るために複数の現場指導や指導以外の仕事を掛け持っておられます。私も専属契約を得るまでは、週1〜2回のチーム指導/フィットネスクラブでのパーソナルトレーニング指導/専門学校講師などを掛け持って生計を立てていましたが、専属契約ではそれまで掛け持っていた仕事の合計金額よりも多く報酬をいただくことができるようになりました。

チームや選手の状況に合わせて臨機応変な対応がしやすい

毎日ひとつのチーム・同じメンバーと過ごしますので、チームのスケジュール変更や選手のコンディションの良し悪しなどによって、その都度臨機応変に対応することが可能です。
パートタイム契約だとどうしても現場に行けない日があるので遠隔で対応せざるを得ませんが、専属契約の場合はそういった状況の変化に迅速かつきめ細やかに対応することができます
逆に言えば、フルタイムS&Cコーチにはその辺りの対応力が求められる、という事になりますね。

その競技について深く知ることができる

多くのS&Cコーチが学生時代に競技スポーツを経験されていると思いますが、自分が経験したことのない競技のS&C指導を任される事もあります。
そのような場合はその競技の特性(動作や筋力・パワー発揮、エネルギー代謝など)を知る必要がある為、ルールを覚えたり実際に練習や試合をじっくり観察したり文献を調べたりしてその競技を理解することが不可欠となります。私もこれまでにアメフト、ラグビー、バレーボール、バドミントンなど未経験の競技のS&C指導にも携わってきましたが、その都度選手やコーチと意見交換をしながら強化が必要な要素やその方法を考えていきました。
また、ウォーミングアップやウェイトトレーニング、身体の使い方などに対する考え方や指導方法が競技ごとに異なっていたりします。そういった考え方や指導方法に触れることでその競技をより深く知れるようになり、その経験が自身の指導の幅を広げてくれます

指導実績になる

専属契約に限らずこれまでの指導はすべて自身の実績として残すことができます。チームとの契約が満了し新しい所属先を探す際にはそれまでの指導実績が問われる場合があります。その際には、全く実績がないよりも実績を積んでいる方が新しい職を得る可能性は高くなります。必ずしもS&C指導の能力と直結するわけではありませんが、過去にプロや実業団、大学などのメジャーなチームや強豪チームでの指導実績がある場合はさらに仕事が得られやすいのではないかと思います。

長期オフが年に1〜2回もらえる

チームとの専属契約では、仕事はすべてチームのスケジュールに準じます。多くの場合土日はほとんどが練習か試合、週休も1日あるかないかといった感じで、会社勤めをしている一般的な社会人の方々に比べると普段の休みはとても少ないです。
ですが、多くのスポーツチームには数週間〜1,2ヶ月間ほどチーム練習がないオフ期間が年に1~2回あります。S&Cコーチもその期間は基本的には休みをもらえますので、旅行に行ったり家族や友人との時間を過ごしたりすることができますし、セミナーや講習会に参加して知識やスキルをアップデートすることもできます。もちろんその間の報酬は約束されていることが多いです。
ただし、オフシーズンは翌シーズンの為にトレーニングを積む期間でもありますので、選手個々とはそれぞれ連絡を取り合って個別またはグループでS&Cを行ったりするケースもあります。

専属契約で働くデメリット

契約先以外との仕事ができない

当然の事ながら、専属契約の場合は契約チームとの仕事が優先されますので、契約期間中は他競技や他チームとS&C指導の契約を結ぶことができません。
ただし、契約を交わす際にチームスケジュールに支障が出ない範囲でチーム以外の仕事の依頼を受けても良い、とする条件を織り込んでもらう事は不可能ではありません。そこは契約先との話し合いになります。
ですが、専属契約の場合は1日の拘束時間も長く、そもそも他の仕事を受けられるほど時間的な余裕がない、という実態もあったりします。

トレーニング指導だけをできる訳ではない

チーム専属契約はチームのすべての活動に帯同するという事ですので、トレーニング指導だけをしていれば良いという事ではありません。
練習前にはアスレティックトレーナーやコーチ陣とのミーティングがあったり、練習中には球拾いやモップかけといった練習の補助を担当したり練習後に選手の自主練習を手伝ったりとS&C指導とは全く関係のない仕事をやる時間も結構多いです。
このような時間にはS&C指導に活かす様々な気づきが得られる事も多く、そこが専属契約の醍醐味とも言えるのですが、S&C指導が全くない日などは純粋にトレーニング指導者として仕事をしていないな、と感じる時もあります。

契約が満了すれば収入がなくなる

専属契約の最大のメリットとして”他に仕事をかけ持たなくても生活できる”と書きましたが、他に仕事をする必要がない、あるいは契約上他に仕事をすることができない為、契約チームからの報酬以外の収入はほとんど得られません
そうすると、専属契約が満了した時には収入がいきなりゼロになる、という訳です。これが専属契約最大のデメリットです。ひとつの仕事に集中できる反面、その仕事がなくなる可能性も常に頭のどこかに置いておく必要があります。

契約がいつまで続くか自分で決められない

しかもその契約がいつまで続くかは自分ではわかりません。
場合によっては「複数年契約」を交わす事もありますが、多くのS&Cコーチの契約は1シーズンごとに更新していく「単年契約」になっているかと思います。そして残念なことにそのシーズンにおけるS&C指導の成果の度合いが、契約が更新されるか否かにはさほど関係がなかったりします。
特にプロチームと契約をしている場合は、競技成績によって監督・コーチが交代すると、S&Cコーチも指導能力や成果によらず交代を余儀なくされる、ということが良く起こりますし、チームの人件費削減を理由にフルタイム契約や専属契約ができなくなってしまうケースも良く聞きます。

セミナーやカンファレンスに出席しづらい

これは専属契約のS&Cコーチの間では共通の悩みです。
専属契約で働いているS&Cコーチなら誰しもが持っているCSCSやJATI-ATIといったトレーニング指導関連の資格は、継続的に知識をアップデートするセミナーやカンファレンスなどに参加してその資格を保持し続けていく為に必要なCEUと呼ばれる単位を取得しなければなりません。多くのセミナーやカンファレンスが週末に開催されるですが、シーズン中はとにかく土日に休みが取れることがほとんどないのでそれらに参加できるチャンスがなかなかなく、3年なり5年なりの単位取得期間の締め切り間際に慌ててスケジュールを調整して単位を取りにあちこちに出向くのが定番となっています。
もっと早めに計画立ててCEUを取れよって話ですがついつい後回しになってしまいます。。

まとめ

以上が私が感じる、専属契約で働くメリットとデメリットとなります。

休みが少なくあまり自由が利かない上に契約の継続が保証されないリスクが伴うものの、ひとつの現場で限られた選手に対して集中的にS&C指導ができる環境はやはり魅力的だと感じます。

専属契約を目指す若手S&Cコーチや将来S&Cコーチになろうと考えている皆さんの参考になれば幸いです。