ステップアップのバリエーション

先日、Twitterにこのような投稿をしました。

ということで今回は、
試合期におけるステップアップのバリエーションに関するわたしの考えをご紹介します。

わたしがステップアップを試合期に使う理由

ステップアップとは下半身のトレーニング種目のひとつで、
片脚で台に昇り降りすることで片脚ごとに筋力を強化できるという特徴があります。

わたしはこのステップアップを試合期のトレーニングプログラムに良く入れるのですが、それには以下のような理由があります。

スクワットよりも効率よく負荷をかけられること

ステップアップのように片脚ずつ行う片側性トレーニングでは、スクワットのように両脚同時に行う両側性トレーニングよりも大きな下肢筋力を発揮できる、という特徴があります(Bilateral Deficit:両側性筋力低下)。そのため、下肢に対してはスクワットよりも高い強度でトレーニングをすることが可能となります。

腰背部への余分なストレスを軽減できること

脚に対しては負荷を強めることができる一方で、バーベルを担いで行う場合はスクワットよりも軽い重量でもスクワットと同等の強度でトレーニングできるので、腰背部に対する負荷を軽減することができます。
スクワットでの強度の高いトレーニングは、腰背部へのストレスも大きくなるため練習や試合でのパフォーマンスの妨げになる腰痛が起こるリスクを伴います。そこでステップアップを選択すれば、それらのリスクを回避しつつ下肢筋力の維持・強化を図ることが可能となります。

筋肉痛の原因となり得る伸張性負荷をかけずに行えること

ステップアップでは、台の上から脱力しながら降りれば下肢筋群の伸張性の筋力発揮を行わずに済みます。したがって、腰痛と同様にパフォーマンスの妨げになる筋肉痛の原因となり得る伸張性の負荷を回避しつつ、短縮性の筋力およびパワーをトレーニングできるということになります。

これらをまとめると、

試合期の練習や試合でのパフォーマンスを阻害する筋肉痛や腰痛、余分な疲労をコントロールしながら筋力・パワーを維持していくために、ステップアップは非常に使い勝手が良い

ということになります。

ステップアップのバリエーション

続いて、わたしが実際に現場で使っているステップアップのバリエーションをご紹介します。冒頭のTwitter動画を見ていただくとよりわかりやすいと思います。

✅自体重ステップダウン

重りを持たずに自体重のみで行います。
台の上からスタートし、5秒かけてゆっくり下りていきます。
股関節と足関節の可動域、膝の横ブレ(knee-in)の制御の2点を特に意識することで関節の可動性(Mobility)と安定性(Stability)の改善が期待でき、練習やトレーニング時のウォームアップや傷害予防エクササイズとして有効。

✅バーベルステップアップ

バーベルを担いで行います。
床からスタートし、できるだけ素速く台の上に上がります。
スタート時には股関節をしっかり曲げた前傾姿勢をつくること、踏み込む瞬間に膝が前に出過ぎたり踵が浮いてしまったりして膝に頼った動作にならず股関節の伸展動作を強調すること、の2点を意識する。
台から床に下りる際に伸張性筋活動を行わないようにすれば、筋肉痛の発生を抑えることができると考えています。

✅ケトルベルステップアップ

バーベルをケトルベルに変更することで、さらに腰背部へのストレスは軽減できます。さらにケトルベルを片手にだけ持てば、体幹が横に傾いたりknee-inしやすくなりますので、それらを制御するための前額面上の動的バランスの改善が期待できます。

プログラムに導入する場合の注意点

わたしがこれらの種目を試合期に好んで使うのは、あくまでパフォーマンスを妨げる余計な筋肉痛や疲労をコントロールしながら、シーズン中に下肢の神経-筋機能が低下してしまう事を防ぐのが目的だからです。

これらの種目だけをやっていれば、腰痛や筋肉痛は軽減できるメリットがある反面、体幹筋群による体幹固定力は強化することができませんし、伸張性負荷をかけないことで下肢筋群の最大筋力や伸張性筋力の強化には繋がりにくい、といったデメリットがあることも理解しておく必要はあるかと思います。

また、これらの内容をそのまま他の現場で使うことが必ずしも効果的であるとは言い切れませんので、現場指導のアイデアのひとつとして参考にしていただければと思います。